僕がLINEをブロックされた女

彼女と出会ったのは大学4年の春。
研究室配属の時であった。

配属先を眺めると見慣れない名前があった。
先生に訪ねると彼女は他学科の1年先輩で昨年は休学していたそうだ。他の配属学生とも話してみたが、誰とも面識はないらしい。

彼女は不細工でも美人でもないが、華奢な体躯で、こう言っては悪いがどこか薄幸に見えた。
配属当初は口数は少なかったが、話好きの院生や同期のおかげで話す機会も増えてきた。

5月のあたまに研究室で僕たちの歓迎会が開かれた。僕は飲み会が苦手で、面倒になると逃げるように喫煙所に行くことが多い。

研究室から廊下へと出ると彼女の姿があった。彼女もこのような場が苦手(あとで聞いた話によると酒癖がよくないとのことであった)らしい。僕らは研究棟を抜け出すことにした。

二人で構内で散歩しながら他愛ない話をした。しばらくして会に戻ることにしたが、研究棟の扉が開かなくなっていた。20時を過ぎるとオートロックが働いていてカードキー無しでは外からは開けることができない。二人揃ってカードキーはおろか携帯も持ち合わせていなかった。人を待つのも面倒で酔っていたこともあり、非常用梯子で3階まで上がり、その後、3階のベランダで煙草を吸った。お互いが喫煙者であることをこの場で初めて知り、僕らはこの喫煙所に集まるようになった。

煙草を吸う合図は、僕の出欠用のマグネットの向きを少し傾けることだった。どちらかが席を外すとマグネットを確認し、何分かしてから喫煙所に向かうようにした。

研究室では静かな彼女は、別人のようによく喋っていた。他の人には内緒と言いながら、休学中のこと、彼氏のこと、自傷癖のこと、たまにノーパンで通学していること等々いろんなことを話してくれた。今思えばステレオタイプなメンヘラだったけれど話は面白く、僕は聞き手に回ることが多かった。

平凡な僕と少し狂った彼女に共通点はあまりなかったが、お互いの秘密を共有していることで仲良くなれたような気がした。

夏頃、僕のアパートに行ってみたいと何度か頼まれたが、片付けが嫌いでお世辞にも綺麗とは言えない部屋に他人をあげる気にはならなかった。どのような意図があったか未だにわからないままだけどこれでよかったんだと思う。

10月に人生で初めて異性と付き合うことになった。大学では秘密にするつもりだったけれど彼女には伝えることにした。いつもの喫煙所でそのことを伝えると、彼女は自分のことのように喜んでくれた。どんなことをあまり話したかは覚えてはないけれど、とても嬉しかった。

卒論も終わり、3月頃、彼女の要望で研究室をサボって都内の池に釣りにいった。コンディションが悪く釣果は乏しかったが、それでも楽しいと言ってくれた。また行こうねと約束をした。

彼女は就職し、上半期頃までは東京で働いていて、その後地方に配属されるとのことだった。配属先が決まったら連絡するから遊びにきてねと言われた。

 


6月くらいにLINEしたらブロックされていました(T_T)